ダイナミック、そしてグローバルな商品先物市場

[深田]実は以前に金とプラチナの価格差に着目したスプレッド取引をしたことがあります。価格の変動性向が似た異なる商品間の価格差が拡大・縮小を繰り返す点に着目し利益の獲得を目指す取引ですが、これなどは個別の株式投資に比べ相当リスクが低いといえますし、商品先物の方がシンプルに感じますよね。財務諸表もないですし(笑)。

[深野]確かに個別の株式投資と比べると、商品先物取引の方がシンプルだと思います。株式は上場銘柄が約4,000もあって、どれを選んでいいか難しい上にマクロ、ミクロの経済動向を注視する必要があります。一方、商品先物取引は、いまおっしゃった金やプラチナなどの貴金属や原油、ガソリン、灯油といったエネルギー、大豆やトウモロコシといった農産物など上場商品は十数種類です。選択肢が少ない分、選びやすいのが利点でしょう。しかも、投資対象となる商品は生活に身近なものが多く、価格の方向感が比較的つかみやすい。さらに、少ない資金で投資できる効率の良さも魅力といえます。

[深田]以前、独立を考えて金細工を作っていた時期があるんですよ。金を仕入れに行く時、「あれ、昔に比べてグラム当たりずいぶん安くなっているなぁ」と疑問に感じたんです。金細工を作って売るより、現物を買えるだけ買って持っておいたほうが儲かるのではないかと思って、渾身の金買いをしました(笑)。あの時レバレッジをかけていたら、今頃は……。

[深野]金の現物だからこそ、長期で持てたとも考えられますしね。先見の明があったのかもしれませんね。

[深田]その後、外資系金融機関でアナリストをした経験がありますが、当時注目していた企業は約100社。各社に取材し株式の投資判断をしていくのですが、“買い”と判断できたのは2社しかありませんでした。これでは時間の無駄ですよね。

[深野]商品先物取引は投資対象品目が限られているぶん深い分析ができます。また商品先物の特徴であるレバレッジを「テコ」のようにうまく使えばハイリターンが期待できます。ただし使い方を間違えるとハイリスクになることもありますので、そこは十分な勉強が必要です。深田さんのようにスプレッド取引でレバレッジをコントロールするのも賢いやり方です。

商品先物市場を大きく変える、2つのポイント

[深田]2011年の1月4日から制度が変わりましたが、どのように変わったのでしょうか。

[深野]投資家にとっては「SPAN(スパン)証拠金制度」の採用と、損失限定取引「スマートCX」を導入する点が大きな変化です。それぞれのメリットについては、以下で詳しくご説明しましょう。

いま、商品先物取引がおもしろい

[深田]商品先物取引は、これからさらに楽しみが広がっていきそうですね。金や原油などの動向をみると実需が底堅く、まだまだ値上がりしそうです。私が初めて金を買ったのは1998年で、当時の価格は確か1グラムあたり960円くらいでした。それがいまや4,000円に迫るいきおいですし、原油も2008年にピークを付けた後いったん下げに転じましたが、再び値を上げています。

[深野]実は私も純金積立による金の現物を長く保有しており、十分な含み益があります。まだ売るつもりはありませんが(笑)、金に限らず商品先物取引のポテンシャルは、非常に高いものがありますね。分散投資としても有効で、しかも相場の方向感がつかみやすいといえます。例えばリーマン・ショックが起こる前の2008年前半は、原油や農産物の価格が急騰しており、どんなことが起こったか思い返してみれば分かりやすいと思います。ガソリンの値段が上がり、パンなどの食糧品価格が上昇しました。海外旅行も燃料サーチャージで余分なお金がかかるようになった。運送コストが上がり、漁師さんが漁に出ることにも影響が出ました。意外に生活に身近ですから株式投資などに比べれば分かりやすさがあり、しかも事業会社などにとっては、商品先物取引の本来機能の一つ、「保険」として利用する方法もあります。透明感が高く安心感もある新たな制度が導入され、これまで以上に使い勝手のよい市場になったと思います。

[深田]しかも夜間でも取引ができます。海外市場のオープニングやクロージングを眺めながら投資を楽しむことができるのも魅力でしょうね。一般のビジネスパーソンが夜はトレーダーになるといったケースも、身近で散見していますから(笑)。

[深野]農産物や金属、エネルギーといったコモディティの動向を見ていると、世界の動きが見えるようになるのも楽しさの一つですね。投資として、資産運用や事業の「保険」として、あるいは世界を見る目を養うことにもつながるのが商品先物取引です。「SPAN証拠金制度」「スマートCX」の導入により、さらに市場が成長しそうですね。

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深田萌絵氏

プロフィール

美術短大卒業後、就職、海外語学留学などを経て、早稲田大学政治経済学部に入学。インターネットTV、マネー誌などで大学生株アイドルとしてブレイクする。アセットマネジメントでのインターン、日系のリサーチハウスでの株式アナリストなどを経て独立。現在はトレーダー・ファイナンシャルアドバイザーとして活躍する。

深野康彦氏

プロフィール

ファイナンシャルプランナー。有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表。さまざまなメディアを中心に、専門の金融資産運用設計から、保険、ライフプラン設計まで幅広く対応。ラジオ日経では「深野康彦のマネーマガジン」のパーソナリティー、新著に「これから生きていくために必要なお金の話を一緒にしよう!」ダイヤモンド社がある。

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